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お客様の声

episode 01 妻の笑顔

20年連れ添った家内が他界してから、この夏で2年になります。

家内との出会いは、大学卒業後に入社した会社でのことでした。
気恥ずかしい話ですが、花のような笑顔の彼女に一目惚れし、
初めてのデートでプロポーズしました。
驚きながらも頷いてくれた笑顔も、昨日のことのように覚えています。
結婚後は2人の子どもに恵まれ、専業主婦として毎日忙しく、
それでもいつも楽しそうにくるくると、働き者でした。
彼女の口癖は「家族の間で隠し事はしない」で、
そんな彼女の愛情をたっぷり受け、子どもたちも皆、正直で真っ直ぐな子に育ってくれました。
幸せでした。当たり前の日常が終わることなど微塵も考えていませんでした。

「乳がんだって」
― 病院から帰った彼女から出た言葉の意味を理解するまで、何秒か必要でした。
ぼう然とする私の言葉を待たずに、
「大丈夫。必ず治るから心配しないでね」としっかり目を見て話し、
子どもたちにも、それぞれが分かるように言って聞かせました。

治療は壮絶を極めました。副作用で髪が抜け、やせ細り、それでも決して弱音は吐かず、
「ウィッグは懐かしのアイドル風にしてみたのよ。似合う?」などとおどけては私たち家族を笑わせました。
しかし、治療の甲斐なく病状はどんどん進行しました。
主治医に私だけが呼び出され、告げられたのは、転移の事実と、あまりにも短い余命でした。
無情にも、余命宣告はほぼ正確でした。トレードマークの笑顔も徐々に少なくなり、
最後の2週間は意識もほぼなく、お別れも言えないまま、妻は逝ってしまいました。

「彼女の人生はこれで良かったんだろうか。
自分と一緒でなければもっと幸せな人生を送ることもできたのでは…。」
言いようのない喪失感と自責の念で、子どもたちを支えてやるべき立場の自分が一番憔悴していました。
大学2年の長女が、病院から持ち帰る荷物のなかに白い封筒を見つけたと言ってきた時も、
とても開く気が起こりませんでした。
正直、葬儀などもうどうでも良く、こちらにお願いすることになったのも、
たまたま親族に紹介されたという縁からでした。
心をなくしてしまったような感覚のまま通夜を終え、
告別式の最後、出棺前に、葬儀社の担当であった〇さん(女性)が、
「お嬢さまのご依頼で」と前置きして、遺品のなかにあった妻からの手紙を代読し始めました。

「パパへ―
“私たち家族の間で隠し事はなし、と約束したけど、一つだけ黙っていることがあります。
「必ず治ってみせる」と言ってきたけど、本当は分かっています。もう難しいということを。
でも、口にしてしまうと、あなたとの人生がいよいよ終わりになりそうで。
言わなければその一日を一緒にいられるような気がして。
つらい思いをさせてごめんね。添い遂げられなくてごめんね。
あなたと過ごせた20年は最高だった。贅沢を言えば、あと10年、せめてあと3年一緒にいたかったけど。
広い世界のなかで、私を見つけてくれてありがとう。大切にしてくれてありがとう。
生まれ変わってもまた見つけてね。
ありがとう。」

嗚咽が止まらない私の手を娘が握り、息子が私の肩を抱いてくれました。
思えば、抜け殻のような私に替わり、葬儀社の皆さんは子ども二人を気遣い、いたわりながらも、
滞りなく通夜、告別式を進めてくれていました。
代読してくれた担当の〇さんは、歯を食いしばりながら、最後まで読み上げてくれました。

この20年間を認めてもらえたような気がして、ふと我に返った私は、
元気だったころのようにきれいな顔にしてもらった妻にもう一度向き合いました。
そして頬に触れ、「ありがとう。またね」と心からの感謝を告げることができました。

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